会社の目指されているイメージをとてもよく理解できました。その中において、土屋社長の「役割」とはいったいどのようなものでしょうか。
「社長の仕事は何ですか?」とよく聞かれますが、それは「後継者」を育てることです。「後継者」というと一人のように聞こえるが、ここで言う「後継者」とは、一人の人間を指すものではありません。最近ではノーベル賞だって一人ではとても取れるものではありません。チームで取るものです。つまり、社長の仕事は事業承継できるようなシステムを作ることではないかと思うのです。
私はこれまではもちろん、ITGネットワークを立ち上げてからも、いわゆる土建屋の経営者の方々にたくさんお会いしていますが、その中で、今日の売上をつくるのに忙しすぎる方が大勢いらっしゃると感じています。その忙しさに充実感を感じてしまっている経営者が多いように見受けられるのです。それでは後継者は育ちません。
そのことに気が付いたら、少しずつだけでいいですから、日々の仕事はできるだけシステムに落とし、また周囲の人間に仕事を任せるようにして、未来について検討する時間を持てるようにすることをお勧めします。人に仕事を譲ると、いったんは効率が落ちます。しかし、経営者としてはそれをやらなければなりません。大切な時間を「今日の仕事」に使いきってしまっているとしたら、そこに明日という未来はありません。私自身も仕事を抱え込んだり、時間を浪費したりして充分にはできていませんが、日々努力しようと取り組んでいます。
後継者づくりのために具体的に行っていることは何かありますか。先日、現場に全てを任せて社長、専務、常務が1ヶ月間休みをとったとお聞きしましたが…。
別に単に海外旅行が好きだからではありません(笑)。昨年、ある時期に社長、専務、常務の3人で1ヶ月ほど有給休暇をとりました。社長である私以外の2人は、絶対に手を抜かずに仕事をやる非常に優秀なメンバーです。この2人がいたから会社の今日があると言っても過言ではありません。しかし、いつまでも居座り続けるのは間違っています。せっかく優秀な人材がたくさんいるのに、やらせない会社がいかに多いことか…。私は「やらせないなら呼ぶな」と言いたい。

本当は社長、専務、常務の3人がいれば仕事は成立する…と言われています。会社として第1ラウンドが終わり、これから第2ラウンドを迎えないといけません。駅伝で言うと、第一区間は上手く走れました。さて、第二区間ですが、いくら第一走者の体力があるからと言って、第二走者の分まで走るのは間違っています。余力があったとしても、第一走者は、第二走者に応援の声をかけたり、歩道で一緒に伴走してあげたりするべきです。たすきを渡すことが必要です。マラソンをやりたい人は自分ひとりで走っていたらいいのです。
丁度、弊社は30周年。第二の創業が必要です。Reborn作戦の一環として行ったのです。単に有給休暇をとりました、というのとはわけが違います。社長である自分だけ休んだとしても専務と常務がやってしまうでしょう。だから3人揃って一緒に休むことが大事でした。私たちがいると下のメンバーに経験できないことがあります。“経験できない”ということは、“成長できない”ということです。この取り組みは上手くいきました。非常に良かったです。私たちがいなくても十分やれると判断したからこそ実行に移したのです。今後も半年に1回やろうと思っています。そのような状態が会社にとっては良い状態であると思います。
これは急に思いつきでやったことではなく、元々、社長、専務、常務がいなくてもいい会社を目指してきたのです。知り合いにこのことを話すと、皆驚きます。何もそんな複雑なことをやったわけではありません。足し算・引き算のように簡単なことなのです。
なかなかやろうと思ってもできないことですよね。
大事なのは「経験させること」です。社長、専務、常務が長い休みをとったのも、10年後に3人ともいないからです。今、3人がいなくても大丈夫な状態を作っておけば、10年後は絶対大丈夫なはずです。
御社では若手がどんどんと成長し、現場で活躍していると聞きます。それもそのスタイルが功を奏しているのでしょうか。

当社では1年生でも受注をいただける状況です。何よりも自分自身が1年目であってもやってきたことであるので「必ずできる」ということは分かっています。繰り返しになりますが大事なのは「経験させること」です。多くの会社では、本当はできるのに経験させていません。できないのは経験させていないからです。社会は高速回転しているわけだから、「10年経たないと経験できません」というのは間違っています。活躍しようとしている人材の頭を抑え付けるような会社ではいけません。経験できない環境では、優秀な人は辞めていってしまうでしょう。やらせてくれる環境があるから人材は努力してやろうとするのです。採用したからには思いっきり力を発揮してもらいたいと思っています。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。