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社長がこの会社に入社されたのはいつ頃でしょうか?

1998年です。元々は銀行員でした。当時、融資先としてIT企業とのお付き合いはありましたが、ITの実務に関しては全くの素人でした。

銀行に勤められていて、こういったまったく違う業界に移ってこられたのは、どういった経緯が?

何でしょうね…。最初は小さな「全く違う業界に転職しよう」という思いが風船のようにどんどん大きく膨らんでいって、ある日、突然、どうにもならない状態になったんですよね。とにかくもっと強いやりがいを感じる環境に身を置きたかったのです。

全く違う業界でいろいろと苦労があったのではないですか?

そうですね。まず、私は技術者と付き合ったことがなかったので苦労しました。当時、私がいた頃の銀行は、文系的な価値観と雰囲気の中でやっていましたから、最初は慣れるのに時間が掛かりました。無我夢中で悪戦苦闘しながらやってきました。とは言え、IT企業の社長であるのに、未だに携帯電話もろくに使えないですから(笑)。機械音痴なんです。社内には電子機器が大好きな人がたくさんいますが、私はその気持ちを理解してあげることができない(笑)。

それは面白いですね。そんな中で、社長の果たされている役割とは一体どのようなものなのでしょうか?

極端な話、私は自分では何もできないと思っています。私はあくまでサポート役であり、主役は現場です。私が2001年に社長に就任した当時、現場にはさまざまな障害があり、持っている力を十分に発揮しきれていない、という強い思いがありました。我が社の社員はほぼ全員が技術者ですが、技術系の会社でよく見られるように、「技術開発」には熱心、その反面で、開発業務を統括する「マネジメント」であったり、社員それぞれの強みを引き出す「リーダーシップ」に関しては重要度が低くなっていました。

一方、私は銀行時代に取引先のいろいろな会社を見てきましたし、経営企画や人事に携わった経験もありました。それらの経験を活かして、現場で妨げになっているものを取り除く活動を行ってきました。ですから、言わば社長である私の役割は「会社を元気にすること」なんです。現場のメンバーの能力を最大限引き出す仕組みづくりをずっとやってきているのです。

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現場を活性化させる仕組みづくり…その具体的な取り組みについて教えて下さい。

さまざまな取り組みがあるのですが、一番肝になるのは「チーム制」です。最もイメージして頂きやすいのは京セラのアメーバ組織だと思います。若いとき、京セラと稲盛氏の経営に興味があっていろいろ勉強していたことがありました。社長就任当時、私は「現場をもっと活性化させるためにはどうすれば良いだろうか?」というテーマについて毎日考えていましたが、ある朝目が覚めたら神様がささやいたのです、「チーム制だ」と(笑)。きっと昔勉強していたことが潜在的に頭の中にあって、降りてきたのでしょうね。思い付いたその日に企画案を作って、翌日にはもう社員に話していましたね。

チーム制というのは、どのような仕組みなのでしょうか?

チームは一つのテーマを役割分担しながらやり遂げるプロジェクトチームです。大体5~6人が一つの単位となります。今、大体200くらいのチームがあるでしょうか。正式な組織図で言えば、「事業本部」があり、その下に「事業部」、その下に「BU(ビジネスユニット)」、その下に「グループ」があり、さらにその下に「チーム」があります。BUのマネージャーや、グループリーダーが自発的にチームを組むのです。

チームにはルールがあるのでしょうか?

チームにはリーダーが必要です。それ以外は何でもいい。とは言え、チーム制をやろうと言い出したときに、狙いやどのように運営していくのかについてはしっかりと伝えました。当初は、130~140くらいのチーム数がありましたが、チームの狙いや目指す状態をチームリーダー一人一人と語り合いました。全体でチーム制の説明会を開催しようか、というアイディアもありましたが、それでは上手く伝わりっこないと感じました。全体の場で話をしても「自分のこと」として捉えてもらえないからです。私は、一人ひとりに責任感を持って欲しいと思っていました。

京セラのアメーバ組織もそうですが、ただ仕組みを作っても上手くいくものではないと思います。運用する際の精神性が大事で、魂がこもっていないと真似できないものです。最初は、毎週土曜日に1人1.5~2時間掛けて、1日5人ずつチームリーダーと面接していました。「チームが増えることによってKSKは成長していく、チームは会社の成長のエンジンである」、「チームリーダーは、言わば、ベンチャーの社長である」…こういったメッセージを一人ひとり伝えていくのです。小さい組織に分ける狙いはいくつかありますが、その一つは「個人の活性化」です。チームリーダーは、一つの組織を任されるわけですから、やる気が出てきます。メンバーも、自分がどれくらい売上や利益に貢献しているのか、どれくらい頑張っているのかが数字で分かるようになり、それが仕事のやりがいに結びついていくわけです。

もう一つの狙いは「問題の見える化」です。例えば、100人で原価率80%の組織があったとします。でも内訳をよく見てみると、5人で原価率10%の仕事をしているチームもあれば、赤字のチームもあります。100人単位で見ていると、これが見えなくなってしまいます。100人単位で「原価率を1%改善しよう」と言っても、なかなか手が打ちにくいのです。しかし、組織を小分けにすると問題が見えてきます。「このチームの仕事振りは素晴らしいからやり方をよく見てみよう」とか「赤字のチームは何とかしよう」とか、鮮明になるわけですね。小さい組織は、このようなメリットがあるのです。

アメーバ組織の基本原則を忠実に踏襲されているのですね。

そうですね。収益額、利益率、売上の成長率、時間当たり生産性…このような定量的な指標を共通で使うようにしています。このような仕組みは走り始めてから段々と整備していきました。

実は、当社の社是は「敬天愛人」なのですが、これはたまたま京セラと同じなんですね。京セラの稲盛さんも当社の創業者も鹿児島出身なんですよ。私はそのことを全く知らずに入社したわけですが、強い縁を感じました。

当社の社員が持っている名刺には、「Team KSK」と書いてあります。これは、「チーム一丸となって一致団結してやっていこう」というメッセージであるとともに、「チーム制」をこれからもKSKの成長にとっての基盤にしていこうという意思表明にもなっているのです。

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