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「チーム制」や「表彰の仕組み」など、非常にユニークな取り組みをされているのですね。

ありがとうございます。私は、これからの組織には「チームビルディング」がとても大事だと思っています。ソフト開発もそうですが、目に見えない知識資本を扱っている仕事においては、「情報の共有」と「組織間の連携」が欠かせません。一昔前によく見られた「ピラミッド型」の組織では、マネジメント層が情報を握っていて、それを権威として使っていました。でも、環境変化のスピードは速くなっていますから、「フラット型」の組織を見習う必要があると考えています。いちいち上司が情報を伝えて部下を動かす、ということをやっていては、なかなか生産性が上がりません。情報がオープンにされていれば、社員が自ら情報を掴んで動くようになりますし、現場レベルで「横の連携」が加速します。最近、他の会社の様子を耳にする機会が多いのですが、「チーム」の重要性についてよく聞くようになりました。「組織のフラット化」、また、それによる「横の連携強化」は、強い組織をつくる上で、重要なテーマになりつつあると感じています。

なるほど、「チーム制」(※KSKの推進する“京セラアメーバ組織”にならったPJチーム制度)や「表彰の仕組み」以外で、取り組まれていることは何かありますか?

去年からHaSPというセミナーを始めました。HaSPとは「Hearts and Spirits Communication Place」の略で1泊2日の社内研修です。これは先輩社員が後輩社員にKSKの「ハート」と「スピリッツ」を伝承する場なんです。昔は居酒屋で、上司や先輩社員が後輩社員に対して散々偉そうに説教を垂れたり、おせっかいに仕事を教えたり、場合によっては人生を語ったりする場がありました。実は、日常業務から離れたこのような場で会社の良きDNAが伝承されているのです。良い会社では、先輩の良いところを学んだり、会社の文化を学び取る仕組みがどこかに必ず存在し、それが社員を成長させ、組織を進化させていると思います。

しかし、最近ではそういうゆとりがなくなってきました。現場のフロントマネージャーは業務の効率化に忙殺されており、周囲のメンバーとじっくりコミュニケーションをとる余裕がありません。すると、一体感がなくなりますし、文化が薄れていきます。

私は働く人の中でうつ病が増えているのも、このあたりに原因があるのではないかと考えています。一人ひとりが集団の中で孤独になっているのではないかと思います。会社は人の集団ですし、人間は社会的動物ですから、人と人とのつながりが大事で、助け、助けられ、サポートし、刺激し合い…そういう中で仕事の成果は上がっていくはずです。そういう趣旨で始めたのがこのHaSPです。

講師はHaSP実行委員会のメンバーが行います。HaSP実行委員会は私が選抜したメンバーで構成されていて、実績のある人、人格的に優れている人、知的レベルの高い人…さまざまなメンバーがいますが、条件は「とにかく熱く語れること」です。役員、事業部長、マネージャー…役職もさまざまですね。

そのメンバーが「マイヒストリー」や「私の秘密」を話すのです。例えば、「実は私は若い頃、こんなとんでもない失敗をしていました。でも、とても面倒見の良い先輩に出会って、こんな良い仕事に恵まれて、頑張っていたら役員になっていました…」とか、こんな調子ですね。いわゆる、昔、居酒屋で先輩が後輩に語っていた内容です。そういった場面を再現しているのです。

この研修は、土曜日の朝9時に始まって、日曜日の夕方5時に終わりますが、最後には「チーム制のあるべき姿」について議論してもらいます。「本来チームリーダーとはこうあるべきではないか」、「今のチームはこう変えるべきではないか」…このような議論を、先輩の話を材料にして自分たちで考えるのです。いろいろな議論が出てきますよ。「もっと周りに感謝しないといけない」とか「もっと仲間と話して愛を持たないといけない」とか。そうして、最後にチームのクレドを作ってもらいます。大体、参加者は15名ずつで3組に分かれるので、3つのクレドができあがります。1日目の夜は懇親会で盛り上がり、タテ・ヨコで交流を深めます。

社員教育の中には、外部の研修機関にお願いしているものもありますが、それらは一般論を身に付けるためです。どこの企業でも通じる考え方や知識であり、それはそれで必要です。しかし、KSK固有の価値観、文化、魂といったものの伝承は外部の人にはできません。KSKの良きDNAは私たち自身で伝えていかなくてはならないと考えているのです。

素晴らしい取り組みですね。

何年か経ったときに、その成果が表れるのだと思います。私は組織の上と下との一体感を大事にしたい。他の会社を見ていてもやはり人間関係が良い組織が成果を挙げているように感じます。社内旅行が復活したとか、運動会をやろうとか、最近そういう話を聞くようになりました。それをもっと仕組み化していきたいと思っています。人と人との距離を縮めようと思ったら、まず、どちらかが自己開示をするのが鉄則です。自己開示をすると親しみが増しますよね。だから、失敗談とか過去の笑い話もしてもらいます。すると、心にグッと入ってくるものがあるんですね。先輩に対する尊敬感も生まれます。

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HaSPセミナーによって、上の世代から下の世代へ受け継がれるものがあるのでしょうね。

そうですね。企業が存続・発展するためにはとても重要なことだと思います。それから、当社では「日報制」をとっています。全員が日報を出すことになっているのです。日報を義務付けている会社は多いと思いますが、当社の日報は「気付き日報」です。自分の考え、つまり、日々の仕事における問題発見や改善提案、あるいは思いを報告するための日報なのです。「こんなことをやりました」という業務の報告は、むしろなくてもいいくらいです。頭の中、心の中を開示することが重要です。

どのようなツールでやられているのでしょうか?

全部メールでやり取りしています。日報の宛先は上司です。Ccに上司の上司も入れます。だから、社長である私のところにも毎日70通くらいの日報が来ます。自分の普段考えていることを上司の前に行って口に出すというのは、結構ハードルが高いことだと思いませんか。それが日報を使うことでコミュニケーションがとれるのです。自分が書いた内容に、上司はすぐに「それはなかなかいいね」などとコメントをします。こうしてコミュニケーションが活性化していきます。

いろいろな会社で「日報制」が活用されている場面を見たことがあります。中には、無味乾燥で事務的な日報が蔓延している会社もあると思います。そうならないための工夫は何かあるのでしょうか?

まず、「気付きを書きなさい」と都度言い続けています。気付きを書くということは考えを書くということであり、これは頭の訓練につながります。「こんな仕事をやった、あんな仕事をやった」という業務報告は、考えなくても書けます。そうではなく、思いや考えを書くことがポイントです。問題意識を持って自分の仕事を見てないと気付きを書くことはできませんから、「考える癖」が付きます。

次に、「上司は受け取った日報にできる限りコメントするようにしなさい」と言っています。フィードバックです。気付きを日報に書くというのは、自己開示です。自己開示をし始めると、人間関係が段々と協調的になっていくのです。面白いのは、日報に部下のことを書く管理職と書かない管理職に分かれるということですね。私から言わせると、日報に部下のことを書かない上司は、部下に関心がないのです。「部下が~~の資格をとって嬉しそうだった」とか、「部下が~~を飲んでいて健康に気を付けているようだ」とか、小さな変化に気付くことのできる上司の部下は辞めません。一方、上司が部下について言及しないチームは、若手の退職率が高いのです。一概には言えませんが、傾向として明らかに出ています。心の開示は読む側にとって、新鮮で、有益で、新たな気付きがあります。日報が待ち遠しくなります。書く側にもそれは伝わるので、日報を書くモチベーションになります。

また、気付き日報は「考える癖が付く」、「人間関係が協調的になる」ということに加えて、「リスクのモニタリング」にもつながっていると思います。問題は放っておくとどんどん大きくなっていきます。それらを予兆の段階で解決できることにつながります。

書いた日報は全社員が閲覧できるのでしょうか?

できません。全社員が閲覧できるようにすると、結局中身が薄くなります。基本的に、日報は上位の階層に上げます。下の階層にはいきません。To(宛先)に直属の上司、Ccに上司の上司を入れてもらっています。全員に見られると思ったら本音が書けないからです。実はこの形式に変えるまで、5~6年間全員閲覧できるような形での日報制度を運用していましたが、当時は無味乾燥な日報が飛び交っていました。業務報告は、それはそれで有効だと思いますが、もっと違うものを求めていたのです。

この日報制度には実はヒントがありました。東証一部上場企業のバーコードメーカー、㈱サトー藤田会長が出された『たった3行で会社は変わる』という本に、「提案日報」のことが紹介されていたのです。㈱サトーでは、日々の提案の積み重ねが蓄積されて数年後には大きな改革につながっています。提案日報を30年間継続してやっているそうです。これが弊社の日報制度のヒントになっているのです。

なるほど。社長は常に情報を吸収していらっしゃるのですね。

ええ。というのは、私はITのことが何も分かりませんから(笑)。私の役割は「会社を元気にすること」だけなのです。「いかにやる気のある組織を作るか」…これだけを考えているのです。

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