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「人材教育が大事だ」と謳っている企業はたくさんありますが、御社の場合は、従業員一人当たりの教育研修費用に年間で「21万円」投資をされています。上場企業の平均である「7~8万円」という水準からすると、実際の投資額に本気の度合いが表れていると感じます。このあたりのお考えについて教えて下さい。

私の社長としての仕事は「現場の活性化」ですから、人に対する投資は最重要事項として位置付けています。実際、売上の2.1%を人材教育に投資しています。ただ、壮大な戦略やスケジュールがあったわけでも、外部のコンサルティング会社が来て絵を描いたわけでもなく、必要性を感じて整備をしてきただけなのです。「社員が本当に力を発揮するために」ということをひたすら考えてきたら、これだけの研修体系になったわけです。今の教育体系の充実度合いは、会社としての問題意識の裏返しであると言えるでしょう。特に、最近では知識や技術を習得するための教育だけではなく、社員の人間力を教育するための研修を重視しています。部下が上司や先輩社員の考えを聞いたり、あるいは、上司が部下の指導の仕方について考えたり…と、こういった人間同士、深い関わりを持つきっかけになるような教育を行うようになってきました。

興味深いのは、かなりの確率で社長が研修に同席される、ということですが…。

そうですね。平日であれ、土曜・日曜であれ、研修には必ず付き合うようにしています。まず、開講の挨拶をします。それから研修中は、途中で口を挟むわけでもなくずっと同席しています。私自身が一部時間をもらって、講師をやる場合もあります。そして、閉講の挨拶をします。とにかく社員と何らかの形で触れ合うことで、私の「匂い」「体臭」「肌の温度」を感じてもらおうと思っています。大体、社内で行っている研修というのは、座学の研修ではなく参加型の研修ですから、社員同士がいろいろな話をします。それを聞いているだけで現場の様子が見えてくるのです。研修は、現場を知る格好の機会です。

「現場を知るため」に研修に同席されているということですか?

もちろんそれだけではありません。私は、教育研修というものは「知識習得や技術力向上のきっかけ」ということだけではなく、「社員への期待を伝達」する場でもあると思っています。会社は「どうでもいい」と思っている人材にお金を掛けたりはしません。「研修を受講してもらう」ということは「会社がその人材に期待して投資をしている」ということなのです。

よく、研修機関の方に「御社の社員は非常に真面目ですね」と言われることがあります。それは、社員が「会社は真剣だ」「本気で教育に取り組んでいる」というメッセージを感じているからです。すると、受講する側も全員真剣に取り組みます。別に、社長である私が怖いから真面目に取り組んでいる振りをしているわけではありません。会社の真剣さや熱意が伝わるから熱心に取り組むのだと思います。当社の研修では、土・日に部下が研修を受けているところに上司が同席するんですよ。

部下の研修に上司が同席されるのですね。

社長である私が研修に参加していたからかもしれませんが、いつの間にか上司が同席することが当たり前になってしまいました。別にルール化していたわけではありません。でも、考えてみたら上司が本当に部下の成長を願っていたら、研修を見たいと思うはずですよね。親が子供の野球の試合を観に行ったり、授業参観に行ったりするでしょう。あれと同じです。子供がしっかりやっているか気になる、あるいは、子供の成長を実感したいと思っているんですね。子供に関心を持っている、子供に愛情を持っているということと全く同じです。

ユニークですね。他社では見られない光景だと思います。

もちろん時間的な制約はあります。全ての研修に同席することはできないですから、研修参加者には全員に「感想レポート」を書いてもらっています。私が同席した場合も同席できなかった場合も必ず書いてもらっています。「気付き日報」同様、「研修で何を実施したか」は書かなくて結構、ただし、必ず「感想・気付き」を書いてもらいます。読むと社員の心の変化、つまり、成長が確認できます。実に嬉しい瞬間です。そして、一人ひとりの感想レポートに返事を書きます。「君にはこういうことを期待しているんだ」、「君はこれからこういう考え方でやってくれ」…というように、価値観教育の意味も込めてコメントを書くと、どうしても10行くらいになってしまうのですが、それでも必ず一人ひとりに返事を書きます。これまで社員からもらった感想レポートは、全てコピーしてファイリングしています。それらは私の宝物です。

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一人ひとりとの直接的なコミュニケーションを大事にされているのですね。

当社の特徴的なところは、社員が一緒に仕事をする機会が少ないことです。規模の小さな会社であれば、同じフロアに社長、役員、部長、一般社員がいてすぐにコミュニケーションをとることができます。しかし、当社の場合は、ある程度規模が大きくなってきましたし、クライアント先に出向いているメンバーが7割を超えます。拠点も分散しています。そのような職場環境においては、私は1対1のコミュニケーションにこだわりたい。何十人も集めて訓辞を垂れるのも良いのですが、人数が少ない場であればあるほど、相手に伝わるものがあると思います。

そう考えると研修の場を上手く活用して、社員に思いをぶつけるのが良いのです。できるだけ意識して触れ合う機会を多くして、相手と距離を近くする、あるいは、メッセージを伝える機会を増やしています。すると、「熱が伝わる」「皮膚感覚が伝わる」「体臭が伝わる」。なにしろ、社長である私が開発の現場に行くと、せっかくの高い生産性を妨害してしまいますからね(笑)。コミュニケーションをとる際には、単に言葉だけ伝達しても意味がありませんから、言葉に思いや熱意を乗せるように心掛けています。ハートに響かなかったら、アクションとして返ってくることもないでしょう。その人も結局変わりません。私がしっかりと思いを伝えることができれば、その社員は私と同じことを話すようになります。それが他にも広がっていくのです。

なるほど。言わば、社長はご自身の「分身」づくりをされているのですね。

そうだと思います。考えを浸透させることに時間を使っているということです。何か組織に考え方を浸透させようと思ったら、大事なことは「社長がそのことを口を酸っぱくして言い続けていること」と「言行一致」だと思います。例えば、「皆、真面目に仕事しましょう」と言って、社長が毎晩銀座に行って酒を飲んでいたら誰も言うことを聞かなくなります。だから、普段から言っていることと行動が違わないようにする。すると、段々、「あの人は本気なんだ」と社員は感じてきます。考え方を伝える上ではそれが一番大事です。社員は社長の真似をします。子が親を真似るように、発言や行動パターンを真似します。それだけ社員は社長のことを常によく見ています。逆にそれがチャンスなんです。

最近では「KSKの特徴は?」と外部の方に聞かれた際に、社員の口からも「当社は教育熱心である」という答えが出るようになりました。これまで取り組んできたことが、浸透してきたのだと感じています。会社から「もっと勉強しよう」いうメッセージが発信されて、社員も「もっと勉強しないと」という気持ちになってきたということです。そうして「自分たちは大切にされているのだな」と思ってもらえたら嬉しいですね。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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