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創業時の情景が目に浮かぶようです。ドラマチックな90年代だったんですね。

そうですね。当時は今と違い、「家事代行サービス」という概念そのものがなく、なかなか理解してもらえませんでした。某金融系機関に事業資金についての相談に行ったときなど、そこの担当者に「そんな事業は日本では無理ですよ。喫茶店を開業したい、ということなら500万円ほどはすぐ用意できますが…どうします?」と言われたこともあります(笑)。

また某著名新聞にベアーズをとりあげて頂いたこともありますが、記事の中で「ニッチなハウスクリーニング業を展開…」と表現されていたんです。こちらの説明が不足していたと感じ、その日のうちにその新聞社本社に向かい、再度説明させて頂いたこともあります。

くじけそうにもなりましたが…創業来のお客様や夫に支えられ、ここまでやってこれました。それにこれまで全国で数え切れないくらい講演をさせて頂く機会に恵まれ、少しずつ「家事代行サービス」の認知を広げていけたのではないか、と感じています。

当時の日本の文化からすれば、家事代行とハウスクリーニングを分けて考えにくかったのでしょうね。

確かにそうですね。でも、これは私自身が一ユーザーとしての経験から言えますが、両者は似て非なるものです。

ハウスクリーニングとは、「クリーニングのプロフェッショナル・サービス」です。
水周りや換気扇を部品に分解し、綺麗に掃除し、ピカピカにして元に戻す、あるいは洗剤との相性など専門知識も豊富におもちでしょう。そして何よりも、「マニュアル化が可能」だということが最大の特徴だと考えています。だから、依頼されたことはきっちりやってくれます。

でも、私が経験したように、窓掃除をしているときに雨が降ってきても、ベランダの洗濯物はそのまま、ということになってしまいがちです。

なるほど。

一方、家事代行はマニュアル化が極めて難しいサービスです。

業務としては、炊事、洗濯、買い物、ペットや植物の世話、そして育児などお客様の生活シーンの至るところがその範囲です。そして何よりも大切なのは、こうした業務はあくまでも手段であり、目的は「お客様の笑顔をつくりだすこと」なのです。ですから、家事代行の業務範囲も絞って特化するのではなく、マルチで対応していくことしか考えませんでした。

家族構成も、人間関係も、生活リズムも、趣味嗜好も、お客様それぞれに異なります。マニュアル的な対応では、目的は果たせません。

ですので、お客様への報連相といったコミュニケーションや、そのバックグラウンドとなる「お客様の気持ちや立場を理解しようとする」「お客様の期待を知ろうとする」「お客様との相思相愛を目指そうとする」ホスピタリティ精神が極めて重要だと考えています。

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私たちは「お客様感動度 120%」を謳っています。そして、これを届けるのは私ではなく、サービスを提供するベアーズレディの皆さんです。ですから、彼女達とはいつも「本物のホスピタリティとは何か」について一緒に考えるように努めています。

ベアーズレディの皆さんは現在何名くらいいらっしゃるのでしょうか?

約2,300名いらっしゃいます。

ものすごい人数ですね。

確かにたくさんのレディさんにサポート頂いています。だからこそ直接のコミュニケーションを大事にしています。

ある日、創業時からご利用頂いているお客様から私の携帯電話に連絡がありました。「ごぼうがない!」とおっしゃるのです。夜の21時頃だったでしょうか…。お客様が仕事を終え、帰宅後料理をしようと思ったら、キッチンにあるはずのごぼうがなかったようなのです。事情をしっかりと伺い、その後担当のベアーズレディに私から電話をしました。

彼女が言うには、「そのごぼうは買ってから3週間ほど経過していたようで、腐りかけていました」「キッチンに残る匂いなどを考慮し、廃棄しました」とのことでした。お客様が帰ってきたときに、もし嫌な匂いがキッチンに残っていれば、お客様は笑顔になれないでしょう。ですから、彼女の判断はホスピタリティ精神にそった行動だと思いますし、決してマニュアル教育では養えないものだと思います。

確かに、マニュアルでは、そういった細かなケース1つ1つについての対応を明記することはできないでしょうし、明記しても覚えられないでしょうね。

そう思います。サービスの現場ではそれこそ多種多様な場面に遭遇します。その時にどう判断し、どう行動するか…。「家庭に、社会に、ひとつでも多くの笑顔の創出に貢献するためにどうすればいいか」という判断軸、これを「ベアーズDNA」と呼んでいますが、このDNAがしっかりと備わっているかどうかでベアーズレディの対応は変わるでしょう。

彼女の判断の根っこにはベアーズDNAが宿っていたということですね。

そう思います。彼女は、ごぼうを目にしたときに判断を求められたのです。そして、正しい判断をしてくれたと思います。ただ、ホスピタリティの世界は無限です。

仕事が大変忙しく、ごぼうをいつ買ったかなんていちいち覚えてはいられないお客様もいらっしゃいます。とにかく仕事を終え、我が家にようやく帰り、一息ついて、そして、ごぼうを使って料理をしようと思ったのでしょう。そうしたら、ごぼうがなかった…。

彼女は、さらに一段深い判断、そして行動をすることにより、もっとたくさんの笑顔をつくり出すこともできたのです。お客様に、「ごぼうが腐りかけているので」と一言メモを残しておけば、あるいはお客様に連絡をしておけば、お客様は感謝の気持ちを抱き笑顔になれたでしょうし、場合によっては買い物を要望することもできたでしょう。

結果としては、お客様にごぼうを探す手間、そしてベアーズレディや私宛の電話連絡の手間をかけさせてしまいました。こうしたケースを通じて、「ホスピタリティとは何か」についてベアーズレディも、そして私も学び続けています。

また、社内で開催されている様々なサークル活動に一緒に参加したりしながら、毎日必ずいろんなベアーズレディと会話をするようにしています。そこではいろいろな相談を受けます。どう判断すればいいのか、何を一番大切にすべきなのか…とにかくブレない軸をしっかりともち、常にそれを伝えています。判断軸がブレると、行動が変わり、ベアーズがベアーズでなくなってしまいます。私たちは、単に「家事を代行する」わけではないのです。

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ベアーズレディの人数も本部の人数も増え、そして事業拠点も東京に加えて神奈川、大阪と広がってきました。「ひとつでも多くの笑顔を」というベアーズの願いが着実に実現されています。その一方で、「DNAの希薄化の抑制」「現場社員の主体性の鍵を握るマネージャー育成」など、いわゆる「成長の壁」と呼ばれる課題に関して御社ではいかがですか?

そうですね。創業後社員数30名ほどまでは、全ての人たちと毎日直接コミュニケーションをとりながら、ベアーズの事業価値や社員にとっての仕事の意味について語り合うことができました。自宅が会社のすぐ近くでしたので、自宅でたくさんのカレーをつくり、それを会社に持ち込んでみんなでカレーライスを食べたりもしました…まるで相撲部屋のおかみさんのようでした(笑)。

さすがに今はこうしたコミュニケーションはとりづらくなりましたが、幸いにも創業来社員に恵まれ、彼・彼女達が今はベアーズの屋台骨を支え、新しく加わるメンバーにベアーズDNAを浸透していってくれているように思います。

「リボン賞」という制度があると聞いたのですが。

ベアーズDNAの実現には、「感謝の気持ち」「思いやりの気持ち」は欠かせません。リボン賞とは、社員同士で感謝の気持ちを伝えあう仕組みなのですが、私も社員からリボン賞を頂くことが今でもあるんです。

他にも、マネージャーを支える次期マネージャー候補社員たちは、「ジュニアボード制度」を通じて、「これからの事業のあり方」などを真剣に議論し、会社に提案してくれています。

「ひとつでも多くの笑顔」の実現に向け、会社の規模の変化に合わせ、御社自身が確実に変わっていっているんですね。まさに、「強いものではなく、変化できるものが生き残る」ですね。

それでも悩みは尽きません。人事評価制度などは、しばしば改定を続けています。ベアーズDNAを実践し続けるために制度はどうあるべきか、といったことを社長が大切に、そして真剣に考えているからこそですが…。とにかく毎年、社員には一人ひとり社長が評価結果や期待などを伝えています。

これからも様々な課題を迎えるでしょうが、とにかくブレない軸をしっかりともち続け、進んでいきたいと思います。そして、ベアーズの全員と一緒に、女性の「ハッピーバランス(仕事・家事・育児・趣味 全てにバランスよく、充実した生活)」をサポートし、もっともっと「女性の笑顔」をつくっていきたいですね。

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