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その後は順調に「100匹目のサル」現象が進んだのでしょうか?

そう簡単ではなかったですね…(笑)。

店舗数が増え、規模が拡大するにつれ、ほおっておけばどうしても想いは薄れていきます。

MPT渋谷では、当初こそ想いを共有できていたスタッフやアルバイトで運営していましたが、そのうち高い時給が目的のアルバイトスタッフがどんどん増えていきました。そうなると想いをもって頑張っているスタッフとの間に歪みが生まれ、人間関係や店舗オペレーションが少しずつ崩れていったのです。

そこで、業務マニュアルを強化しよう、と動き出したのですが、結局は「マニュアル化には限界がある。人は考えてから行動する。だからやはりまずは考え方を束ねることが大切だ」と悟り、そこから全従業員が共通した価値観や基準をもつことを目的とした「イズムプロジェクト」の企画へとつながっていきました。今まで皆で共有していた『マルハンらしさ』を問い直し、それを言語化したのです。

当時の組織規模はどのくらいだったでしょうか。

店舗数が約50店舗、従業員数は2,000名を超えていました。

壮大なプロジェクトですね。

そうですね。ホールスタッフの気持ちや本音を聴きだしたり、「マルハンらしさって何」について議論を何度も繰り返しながら、全従業員の合意を得た明確なイズムの完成を目指しました。ここに至るまでに1年半ほど要しました。

「人間は忘れる生き物であり、楽をしたがる生き物だ」と言われています。そういう意味では、イズムの完成がある種のスタートラインだったのでしょうね。

その通りです。ここからイズムプロジェクトチームの闘いがスタートしたのです。

議論は重ねましたが、当時、イズムを大事にしようとする人もいれば足かせに感じる人もいました。イズムが共有されていく店舗もあれば、薄まっていく店舗もありました。

そこで、「イズムの芽」や「イズムの殿堂」、「スーパースター制度」などを、「イズムでつながる組織づくり」のための仕組みとして企画していきました。

例えば、「イズムの芽」は、それまでであれば仲良しスタッフ同士の会話の話材に過ぎなかった「マルハンらしい活動」を全店に広報し、全店での朝礼時に紹介していこうという企画です。これは、年間365のエピソードが毎日全店に共有されるようになっています。

そして、委員会にて厳正に審査され、より多くの共感を得た5つのエピソードを殿堂入りさせようというのが「イズムの殿堂」です。殿堂入りしたエピソードは、ポスターやカレンダーになり、「マルハンらしさ」を後世にも伝えていくのです。そして、この行動はマルハンの歴史を刻むことでもあります。

先に伺った「100匹目のサル」のお話同様、エピソードや物語は、言葉や文言に込めた意味の正しい理解、そして共感を促す絶好の素材ですよね。

そうですね。そして、共感や行動を促すためには、「体験」も大切な要素だと思っています。

昔のパチンコ業界は、なかなか「ありがとう」と言われることが少なかったのです。今では多くの「ありがとう」を頂ける業界になりました。

「スーパースター制度」は、サービスを提供したスタッフをお客様や仲間から投票してもらい、得票の多かったスタッフを表彰しようという目的で企画した制度です。

私たちの行動指針の中に「判断基準はお客様」「マルハンファンの創造」「ベストの追求 ~感動創造~」というものがあります。自分のやっていることが行動指針に沿ったものなのかどうか、そういう実感・体験をスタッフに得てもらう上で、さらには同じく行動指針にある「プラスのストローク」を実践する上でも、スーパースター制度は秀逸な制度だと感じています。

確かに理に適った素晴らしい制度だと思います。

先日、仕事でお会いしたある方がおっしゃっていました。

その方は、マルハンに訪問するなら、マルハンの店舗にまず行ってみよう、と思われ、MPT渋谷に行かれたそうです。マルハンではサンリオ様のご協力を頂き、景品としてマルハンのユニフォームを着せたキティちゃんの携帯ストラップを取り扱っていたことがありました。
その時に対応したスタッフが機転を利かせ、ストラップを入れた箱にリボンをかけたらしいのです。

その方はどう見ても中年男性です。キティちゃんのストラップなら自分で使うのではなくお子さんやお孫さんへのお土産でしょう。その方が何も仰らなくとも、その場にいたスタッフが、相手の視点で発想し、期待を上回るベストを追求しようとした行動なのでしょう。
その方は、「何故、ここまで気を配ってくれるのだろう」「最近、ここまで気遣ってもらった記憶はない」と、大変感動され、そのスタッフにスーパースター制度の一票を投じてくれたようです。

私たちが掲げている「小さな感動の積み重ね」が各店舗で実践されていることを実感し、私もとてもうれしい気持ちになりました。

パチンコ業界のお客様の単価は月に数万円、年間では数十万円以上に及ぶお客様もいらっしゃいます。個人で外食店舗にここまでの金額を払う人はそれほどいないでしょう。百貨店であればまさに上得意様です。ホールスタッフは、こうしたお客様とマルハンをつなぐ極めて重要な存在なのです。

お客様に感動して頂けるサービスを提供してくれるホールスタッフはマルハンのかけがえのない財産ですし、スーパースター制度をはじめ、様々な取り組みが各店舗のスタッフたちをイズムでつなぎ、そしてそこから新たなイズムの芽が生まれてくる…こうした流れを加速させていきたいと考えています。

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「次のマルハン」に向けて、今はどのようなことに取り組まれているのでしょうか?

昨年、イズムの中に「組織理念」を新たに打ち立てました。

「共感参画型組織 ~夢を語り、自ら参画せよ~」
「挑戦し続ける組織 ~失敗や変化を恐れず挑戦せよ~」
「チームマルハン ~IではなくWeで考えよ~」

の3つです。

その頃、店長たちと若手従業員のことを話しているときに、あることに気づいたのです。

あること…

今でも「共感型採用」を重視しているのですが、新卒採用を始めた頃は「将来像」に共感してくれていたけれども、最近はまさに「今」に共感しているのではないだろうか、と。

90年代前半の頃は、学生を魅了できるものは何もなかった。自慢できるものもなかった。将来への熱い想いだけだった。だから当時マルハンへ入社してくれた従業員は、マルハンのビジョンに共感し、その実現に人生をかける決意をしてくれていた。

その後、彼ら・彼女達の努力によって、MPT渋谷、立派な本社オフィス、静岡県伊東市の「マルハンビジネススクール伊豆高原」といった魅了できるモノを次々とつくっていくことができたと思います。

しかし、それと引き換えに、「ないモノからあるモノ」へ、「将来から今」へと共感の対象が変質していっているのではないかと気づいたのです。

マルハンの歴史でもあり、成長を支えてきた「人のチャレンジ」が弱まっているのではないかという懸念ですか?

まさにそうです。

若手従業員に「これからの人生の目標は?」と尋ねたとき、「店長になる」なんていう答えが返ってきそうな懸念があるのです。店長はとても重要なポストですが、現状の店長をイメージして言っているのであれば、それは将来につながるものにはなりません。新しい店長像を切り開き、その先にある将来を描き、チャレンジするものであってもらいたいと思います。

こうした懸念はマルハンが売上高1兆円を達成した2005年頃から感覚としてありました。

2兆円だって、3兆円だってこのまま店舗展開していけばおそらく到達できるだろう…しかしその先に、従業員が共感できる未来像があるのだろうか、と。

ですから、「世界レベル」「エンターテインメント企業」を謳い、「今はないモノ」を掲げ、従業員がそれぞれの夢をそこに重ね合わせていけるようにしているのです。

「世界レベルのエンターテインメント企業」には具体的にどのような意味を込めたのでしょうか?

世界規模や海外進出をしていくという意味合いより世界水準、つまり『世界レベル』を強く意識したものになっています。私たちが提供するサービスが業界や日本だけのレベルにとどまることなく、将来につながる高水準を次なる目標にしようとするものなのです。今行っているサービスが「世界レベルなのか?」と常に自らに問いただし、意識する必要があります。

「1.5リットルのマーケット」という言葉があります。

1.5リットルとは、人間が一日に摂取する水分量のことです。このマーケットの中で、各飲料メーカーは毎日競争しているわけです。

昔なら水、麦茶、牛乳などある程度のカテゴリーに限定されていました。しかし、そのうち炭酸飲料やスポーツ飲料が生まれ、今ではコンビニエンスストアに行けば、冷蔵庫に数え切れないほどのカテゴリーや種類のドリンクが陳列されています。

つまり、例えばトマトジュースメーカーは、トマトジュースメーカー同士で競争していた時代から、その境界線がなくなり、ありとあらゆる飲料メーカーとの競争になったのです。

パチンコ業界も同じだと…。

同じです。

私たちマルハンも、「隣のパチンコ店」と闘っているだけではダメなのです。パチンコ業界の外、つまりレジャー産業全体の中でどれだけ魅力を伝えられるか、そのためのチャレンジが必要だと感じているのです。

また、「世界レベル」の対象は店頭接客だけを指したわけではありません。

例えば、人事部門であれば人事という領域で世界レベルのシステムやサービスを実現していこう、という想いを込めています。

パチンコ業界の中だけで認められ、活躍できる人材ではなく、外の世界で認められるような人材を育成していきたいのです。

ある外食大手チェーンで幹部クラスの人材を探すことになったとき、その経営者が「マルハンの店長を採ってこい!」と言われるような人材イメージです。

私は、共感型採用活動の現場に長年直接参画してきました。そして、入社してくれた従業員とたくさんの約束をしてきたのです。「こんなことがしたいんだ!」と。

約束は One Way では成立しないと思っています。まさに、「I(私)」ではなく「We(私たち)」の関係で成立するものです。

私と従業員との真ん中には、給料とか休日日数ではなく、マルハンの将来像があるのです。義務ではなく希望です。

従業員達は、周囲の反対や偏見を押し切ってマルハンへの入社を決意してくれました。

そういう決意や想いが私を支えてくれています。
だから私は約束を忘れません。これまでも、そしてこれからも夢を追い求め、そして実現していきます。


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