「違う、そうじゃない!!」
ロビーに支配人の声が響き渡ります。
ここはオープンを間近に控えた高級ホテル。
支配人のジョンソン氏は、社員を一人前に育て上げようと、つきっきりの指導をしています。
系列のホテルで「今年、一番お客様を笑顔にしたサービススタッフ」という
輝かしい賞に選ばれたジョンソン氏は、若手がなら期待の星として、
新規にオープンするホテルの支配人を任されたばかりです。
(現場のことなら、私が最もよく分かっている。皆は言うとおりにすればいいんだ)
そんな内心の焦りを感じながら、社員を『指導』しています。
「しかし、支配人。お客様からのお問い合わせには、コンシェルジュが対応する決まりと伺いましたが。
私たちがいちいち対応していては、チェックイン業務が止まってしまいます。
「だが、臨機応変にしなければならないだろう!」
今はロールプレイングの最中。
年配の女性宿泊者役のスタッフが、フロントにものを尋ねたところ
「コンシェルジュにお尋ねください」と冷たくつき返されたのを見て、
ジョンソン氏は思わず、声を荒げたのです。
「見てみろ!あの方は高齢で足が不自由なんだ。
杖をついているのに、それに気付かないのか。君の目はいったい、どこについている。
おまけにコンシェルジュはもう3人も待たせておいて、お客様は皆、いらいらしてる。
そういう状況を見て、自分の頭で考えろと言っているんだ!」
「そう仰られても、さっきと指示が違いますわ。
不規則なケースが出てくるなら、きちんと場合分けしてマニュアルにして下さらないと、対応が出来ません。
悪いのは私たちじゃありません。私たちはきちんと言われたことをこなしています」
ジョンソン氏は怒りと無力感で、思わず天井を見上げてしまいます。
(ああ、なんでそう他人任せなんだ。 全員が私のようにものを考え、行動できたら・・・!)
|